大人向けキャンプ・焚き火・アウトドア体験創造集団「週末冒険会」
コラム

何で荷物が増えるのか?

キャンプの悩みの一つとして常に上位にランキングされる、道具が多くて大変だという問題。

憧れのブランドで一式揃えて、道具を使う楽しさに最初の頃は苦労も感じなかったものの、回を重ねるにつれ、深夜早朝の準備や片付け、帰宅後のメンテナンスや収納場所の問題などに、何でこんなに道具が多いんだ!?と、八つ当たりしたくなった経験がある方も少なくないと思う。

では、何故そんなことになってしまったのか?といえば、一言で言ってしまうと、何となく買ってしまったから、、というのがとても多い。そして、その何となくを後押ししているのが、心の底にある“所有欲(カッコいい、かわいい)”と、“不安”の2つだ。

所有欲に関しては個人の好みなので、重くて運ぶのに苦労しようが、片付けが面倒だろうが好きなものは好き、というのであれば、人が口を挟む筋合いではないだろう。

しかし、もう一つの“不安”については、その仕組みを知ることで、かなり装備の軽量化に繋がる。

【不安と装備の関係性】

“不安“という単語を辞書で調べると、その意味は” 気がかりで落ち着かないこと、またその様(さま)“ということになっている。そこには、”何が起きるか分からないから“とか、”予想がつかないから“という意味も含まれるだろう。

この”不安”こそが、野営装備を増やす主な原因になっていると私は考えている。

自宅や自分の暮らす街と違い、インフラも設備も何もない野外で過ごすのに、あれこれ困ったり不愉快だったり、時には生命の危険までも本能的に感じる為に、その対抗策として、都市暮らしに近い環境を再現しようとすることが、荷物の増加につながるという訳だ。

例を挙げると、、

・自宅同様に雨風を凌げる屋根と壁を再現しようとして、大型のテントやタープを使う
・夜の闇に恐怖を感じて、その暗さを打ち消そうと幾つものランタンを運び込む。
・背中が痛くならず、出来るだけ快適に眠りたいので、キャンプ用ベッド(コット)で寝る。

というような具合だ。

【理屈を知ることが大事】

人が不安を感じ、何とかしようという際には、不安の原因やメカニズムを自分なりに推測した結果として、対応策のモノやコトを準備する。このメカニズムを知ることが、不安を解消してくれる近道なのだ。

例えば、冬のキャンプは当然寒い。しかし、何故寒いかと考えてみれば、気温が低いところに風が吹きつけているから、、という理屈が見えてくる。

ならば、気温を上げてやること、風を避けることが寒さを防ぐ答えとなり、その方法は、より暖かい防寒着を使うだとか、風の当たらない物陰に移動する、、ということになる。

この答えは人ぞれぞれで、また条件によっても変わってくる。同じ温度を上げる方法でも、道具に頼るならばストーブを持ってくるという解決法もあるだろうし、風を防ぐにも、風上にタープを張る、といった答えもあるだろう。

重要なのは、漠然と不安を抱え続けるのではなく、その理屈を理解して、理論的な対処法を施せることだ。


【手段でなく目的にフォーカスする】

こうして不安の原因を突き止められ、その対処法を考える時に、荷物が多くなるかどうかの分かれ目となるのが、ハード(道具)に頼るか、ソフト(知恵や技術・経験による解決法)に頼るかだ。

当然、ハードに頼れば従来通り、沢山の荷物を抱えてのキャンプスタイルが続くことになるが、ソフトに寄ることで装備を減らすことが出来るようになる。

先ほどの例で言えば、雨風を凌ぐのが目的ならば、その雨量や風量によっては、大きな樹の下でも間に合うかもしれないし、そもそも雨が降っていないのならば、タープ自体、必要が無いという解決方法も見えてくる。

大事なのは不安の素を潰すことで、そこに至る解決法はぶっちゃけ、何でも良いのである。ここを注意しないと、手段が目的化してしまい、何が何でも道具が必要というふうになってしまう。

【野外の装備は2段階】

正直な所、温暖な季節の管理された日本のキャンプ場で1,2泊程度過ごすのに、心底不安を感じるほどの問題など、殆どないといってよい。究極を言ってしまえば、そんなシチュエーションならば、飲み水と薄い毛布程度があれば、3日間くらい何ともなく過ごせるのである。(無論、腹は減るだろうし、寝心地は今一つだろうが)

ここからは私の独断だが、野外装備は2段階に分かれると考えている。

まずベースとなるのが、生命の維持に直結するようなアイテムだ。命の危険があるリスク要因としては、緊急度の高い方から、怪我や病気、低体温、脱水、疲労、飢餓などがあげられるが、これらに対応するための装備だ。

具体的には、救急キットや助けを呼ぶための通信機材だったり、体を冷えから守るための防寒着や暖房の為の火起こしキット、また飲料水や浄水器というものになる。

このベース装備類は、キャンプ場外の野山に出る際にはほぼ必須だが、普通のキャンプ場ではあまり必要ない。なぜなら、緊急時には周囲の人や管理人に助けを求められるし、いざとなれば帰宅できてしまうからだ。


そして2段目が、快適性やスピード、便利さを重視した装備類ということになる。

先ほどの例で言えば、より快適に眠る為のキャンプ用ベッドであったり、椅子やテーブル、複数のランタンといったものだ。

これらは無くても死ぬことは無い。それよりも快適なキャンプを過すのがメインの理由で持参する道具になる。そして、ここで先ほどのハードorソフトの考えが関係してくる。

無くても何とか過ごせるけど、あった方がやっぱり便利で快適、、ならばどうするか?その選択肢は、

1,持っていく
2,現地で作る、何かで代用する
3,我慢する

ということになるかと思うが、装備のスリム化で言えば選択肢2,が一番だ。けれどデメリットとしては、上手く代用できたり、作れるかどうかわからない、また作れても時間がかかるといった点がある。ここは経験と技術の豊富さが問われるところだ。

となると、より現実的なのは、1,の持っていくだが、同じ持っていくにしても、必要な機能・性能を考えて、それに見合った最小限度の道具にすることで、装備の軽量コンパクト化を実現できる。

大荒れの天気の恐れが少ないのであれば、同じ雨風を凌ぐにもテントではなくタープシェルターにする、折畳椅子も座り心地には劣るが、キャンプマットで代用する、という風にだ。

この、快適さや便利さと荷物の少量化のバランスは常にせめぎ合うので、自分がOKとするラインを見極めることが必要だ。

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