雨の日の火起こし

火が起きないかもしれない、という不安。
こいつは常に自分の中に、有る。

特に、キャンプツアーに参加してもらっているメンバーのみんなに、早く暖かい環境を、あるいは冷えた体を温める食事を提供しなくては、、といった責任がある今は、ソロで火起こしに四苦八苦していた頃とは違うプレッシャーが、ふとした瞬間にヒヤリと背筋を撫でて行く。

ましてやそれが雨の日で、誰もが濡れて寒さに震えているような状況ならば猶更、そんな心境は強くなる。

晴れも雨の日も、火起こしの理屈は同じ

火が燃えるという現象は、化学だ。そしてその理屈は明確に存在している。
その仕組みは燃料、酸素、温度の3つが一定条件で整うことだ。

だが、理屈でわかっていても、キャンプでの焚き火で実際に上手く火起こしが出来るかどうかは別の話で、燃える理屈どおりにこの3要素をコントロールしてやれれば、晴れだろうが雨だろうが、火は点くのである。

物を燃やすには、単純に言うと可燃物と空気が揃った状態で温度を上げてやることだ

では、マッチやライターの火を当て続けているのに、なかなか点かない、消えてしまう、、というのは何故か?というと、温度が発火点まで上がっていないから、というのがその答えだ。

だったら引火点に達するまで温度を十分に上げてやれば解決!となるはずだが、じゃあどうやってそれを実現するの?というのが一番問題になる。

その答えは“ほくち(火口)”にある。

ほくちが超重要

熱量を一気に集中して上げる為に、一番最初に火を点ける材料がこの、ほくちになる。そして温度が上がらない理由は様々あるのだが、シンプルに言えば熱量が足りないということに尽きる。

1,ほくちの絶対量が足りない
2,温度を上げるのを妨げる要因が存在する

この二つが焚き火シーンでよくある着火失敗の要因だろう。1,についてはよく見られるのが、枯葉や紙切れをちょっとしか準備していないというもの。そして2,の大半を占めるのは、ほくちが湿っていることだ。

ならば、逆に言えばこの二つを解決してやれば良いのであって、く乾いたほくちを十分に準備して着火してやるという、ごく当たり前のことになるのだが、案外とこんな単純なことがおろそかになっている場合がとても多い

例えば、少しの紙類を丸めてかまどの中心に置き、小枝をそこに乗せて火を点ければ、一見、焚き火が上手く燃え上がったように見える。

しかし実際には、ほくちである紙が燃えているだけで小枝にうまく火が移っておらず、その結果、数分後には火が消えてしまう、、という状況だ。

これは1,の絶対量の問題、それにプラスして、ほくちの火を引火させたい小枝の積み方がスカスカだったり、平たく重ねてある為、ほくちから登った炎の熱を、小枝に集中させ切れていないことが原因だ。

また2,では、集めてきた落ち葉や枯草、樹皮などが乾いているかどうかをちゃんと気にしていないことや、新聞紙の場合には湿気を吸ってしまっているケースが殆どだ。

一見、乾いているように見える地面の落ち葉も、ちゃんと乾燥しているのは、日光に晒されている一番表層の部分だけで、その下は湿っている場合が多い。

これをよく確認せずに集めてしまっており、まして手が汚れたりするのを嫌って、手袋をしたまま収集していると、濡れているのに気が付かない、、ということになる。

ほくちの材料としてよく使われる新聞紙にしても、小枝を集めて適切なサイズに切ったり折ったりという、火を燃やす準備がまだ済んでいないうちに丸めて地面に置いたり、その辺に放置したりすると、空気中の湿度の度合いによっては驚くほど速く、湿気ってしまう。

これを防ぐには、着火の準備が整うギリギリまで、新聞紙はジップロックなどの防水容器に入れておき(勿論、持参する際も入れておく)、小枝の準備が整ったら、素早く新聞紙を丸めて枝を乗せ、すかさず火を点ける、という風に迅速に動く必要がある。

ということで、上手く一発で着火に成功するには、ほくちが最も重要なカギとなることを覚えておいて頂きたい。

ほくちの種類

ほくちにも種類が色々あり、自然界から入手できるもの、人口のものと大まかに分類すると、代表的なのは下記のようなものだ。

1,自然界・・・・落ち葉、枯草、藁、乾いた樹皮、小枝などの削りくず等
2,人工物・・・・新聞紙、牛乳パック、麻紐をほぐしたもの、ポテトチップス等

どれも共通して言えるのは、軽く、乾いていて表面積が多いということで、イメージ的に表現すると、カサカサあるいはホワホワしているもの、という感じになる。

なので、上記にとらわれず、こうしたイメージに当てはまるものならば、結構何でも(それなりの量は必要だが)使えることになる。

そして、ほくちに求められる性能はある一定時間、一定の熱量を生み出し続けてくれることだ。

拡げた新聞紙のように、火を点けたらボワッと燃え上がりはするが、燃焼時間が僅か数秒というのでは次の材料へ引火させずらいし、逆に蚊取り線香のように持続はするけれど、発生している熱量が少なすぎるというものだと、これも引火点まで到達できずに、火が燃え上がらないということになってしまう。

着火は下の方から

これらほくちを十分に準備したら、その上にこれまた十分な量の小枝(焚き付け)を乗せて、いよいよ着火となるのだが、特に雨あがりや小雨が降る環境では、晴れの日よりもほくちを大量に投入するのがコツだ。

何故ならば、雨の水分が蒸発する際に熱を奪い、これが結果的に火起こしを失敗させてしまう。なので、奪われる熱を上回る熱量を一気に発生させて引火点までもっていく為には、大量のほくちを仕込む必要があるということだ。

もしほくちを使い切ってしまったら、、という不安から、少しだけしか使いたくないという気持ちになるのは解るが、特に雨の日は一発に賭ける気持ちで、いつもの倍ほどは使おう。

そして、ライターの火を点けるのは、ほくちの下の方からにすること。火は上に燃え広がるので、こういう点火の仕方をすることで、多少ほくちが湿っていても、きれいに燃え上がってくれる。

雨の日の火起こしは確かに難易度が高いもの。けれど十分な準備をした上で理屈通り、手順をしっかり踏んでやれば、不可能な事ではない。

どんな環境でもまずは確実に、そして手早く。
命を繋ぐための焚き火とは、こうしたものだと、私は思っている。

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