大人向けキャンプ・焚き火・アウトドア体験創造集団「週末冒険会」
コラム

少年の心

先日の晩、何気なくTVを点けてみると懐かしい映画を放映していた。田舎町に住む少年4人組が死体探しに森へ出かけるというストーリー、そう、“スタンドバイミー”だ。

映画を見たことが無い人も、ベン・E・キングが歌う主題歌はあまりにも有名なので、どこかで耳にしたことはあるだろう。

少年たちのひと夏の冒険がテーマのこの映画、上映されたのは私が中学生の時で、何とも言えず共感というか感動というか、とにかく心に響いたのを憶えている。

仲間と共に薄暗い森を抜け、峡谷にかかる線路を渡り、焚き火を囲んでくだらない話をしながら眠る。街の不良達、親父から盗んできた煙草、狼の遠吠え。。

成長した後になってみれば、大したことでもない事柄のひとつひとつがあの頃は大事件だった。

子供の頃に感じていたワクワクやドキドキ感。暫く忘れていた感情はこれだったな、、と、画面の中の少年にかつての自分を投影しながら気付かされた。

 

年齢を重ねて大人になり、色んな経験を重ねると、段々と新しいことに出会う確率が減ってくる。昔は知らないことだらけで、それには怖さや失敗もあったが、その分、新しい感動や発見、成長というものがあった。

初めて寝袋で眠ったキャンプ、足の自由が利かず眠れなかった夜。自転車で何十キロも先のキャンプ地まで走り、腕が真っ白に塩を吹いていた真夏の日。

記憶に残る思い出の多くは、大変だったけれど後になってみると良い思い出、ということが多い。けれど、最近、そうした想いをしているだろうか?そんな体験を提供できているだろうか??と自問自答してみて、黙り込んでしまった。

 

そんな心の燻りを感じていた先日、かなり久しぶりにプライベートでのソロキャンプに出掛けることが出来たのだが、これが良かった。とは言っても仕事絡み、撮影絡みだったので純粋なプライベートではないのだけれど、それでも単純に楽しかったのである。

目的はパックラフトという、一人用のゴムボートで下る川下りキャンプツアーの下見だったが、新しい試みを、自分一人でやってみるという久しぶりの体験で、忘れていた感覚が甦ってきた。

流れの読めない川で急流に突っ込む瞬間の緊張。のんびりゆらゆら船を進ませながらも、今夜の寝床の場所はどこだ?焚き火の薪は拾えるか??と視線を巡らす。昔、あそこの河原にテントを張った夜には、得体の知れない光が川面をフワ~ッと動いていて、一緒にいた仲間とビビったな、、と思い出してニヤニヤしてしまう。

初めてソロキャンプをした時や、一人バイクで遠くまでツーリングに出た頃と同じ気持ちを感じて、頭の中は30年前と変わってないな~と少し嬉しくなった。

 

私が独立起業して、どうやって食っていこうか考えている時、決めていたことの一つが、儲かるからやるのではなく、好きで楽しいからやることで稼ごうということだった。

仕事として毎週のようにキャンプする日々では、何度も同じ場所で同じことを繰り返していると、順調にツアーが進むのは良いことなのだが、個人的には初めての頃に感じた楽しさが薄れてしまう。

ガキの頃、裏山や幽霊屋敷の探検で興奮しまくったあの気持ち。大人になってもずっとそんなことをやっていたくて、みんなで楽しく遊んでいたくて始めたこの仕事なのに、忙しさや安易さにかまけて、ルーティーンに埋もれてはいまいか?と、少し反省してみる。

日常ですり減った感性を取り戻す旅。野営旅にはそんな力が隠されていると思う。
その為には、楽な手段や安易な道具を使うよりも、自分のアタマと力を使って旅を切り開いていく方が、充実した時間を過せたと、きっと後で納得できるだろうと、過去の経験からも信じている。

そして、その為には、一緒に旅を楽しんでくれる仲間が必要だ。行ったことのない海山川で、時には悪天候や予想外のハプニングにも見舞われることもあるけれど、それも楽しかったよねと言ってくれる面々。

週末冒険会には、これまで何度も一緒に焚き火を囲んでくれたメンバーが沢山いて、彼らこそがその野営旅の仲間だ。

これからはもう一度、そうした野営旅を増やしていこうと思う。少しずつにはなるけれど、またどこかの海辺や森で過ごす、素敵な時間を作っていこう。

焚き火の炎に顔を照らされながら笑う仲間と共に。まるでスタンドバイミーの少年たちのように。

 

と、先日20日で独立して8年が経ったのを思い出した、梅雨の合間の晴れの日の独り言。
皆様、今後も変わらず楽しくキャンプや焚き火にお付き合い下さい。

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