大人向けキャンプ・焚き火・アウトドア体験創造集団「週末冒険会」
コラム

焚き火台の弱点と選び方(番外編)

キャンプで焚火をするなら焚火台を使うのが当たり前。そんな風潮が日本のキャンプシーンに根付いてから、もうだいぶ経つ。

おそらく、このコラムを読んで頂いているキャンプ初心者やこれから始めようという方の中にも、焚き火をするならまず焚火台を買わなきゃ!と考えている方も相当いるだろう。

けれど、焚き火には必ずしも焚火台が必要という訳では無い。むしろ、焚き火台を使うと火を扱いにくかったり、状況によっては火が本来の役割を果たせないこともある。

これは私の著書の“焚火の教科書”でも、焚火台の弱点と選び方ということで誌面を割いた。ただ、紙面の関係もあり書ききれない部分もあったので、今回のコラムは本の内容と合わせて参考にしてもらえればと思う。

焚き火台はホビーの焚き火の道具

まず初めに大前提として知っておいて頂きたいのが、焚き火台は基本的に、火を燃やし炎を眺めて楽しむ、ホビーとしての焚き火の道具だということだ。

これは、火を燃やして愛でて楽しむのを否定している訳ではない。しかし、野外で焚き火を燃やす本来の理由は、生活に欠かせないエネルギーだからというところにある。

料理をしたり、寒い時期には体を温めたり、あるいはみんなで集い、心休まる時間を過ごすための柔らかな照明だったりというのが、その存在意義だ。

けれど、様々なキャンプ道具類が豊富に、しかも安価で入手できるようになった今では、生活の為のツールとしての焚き火の役割を、そうした道具たちが取って代わることが多くなってしまっている。

そんな現在のキャンプ環境の中、敢えて焚き火台の火で野外の生活を実践していこうとなると、様々な問題が出てくるのだ。

焚き火台の大きさ

焚火台の弱点はまず何と言っても第1に、その大きさにある。なぜなら、容量が小さすぎる為に、熱源としての利用には不便な状況が多々、発生するのだ。

安定して火が燃え続けるには、一定以上の温度をキープし続ける必要がある。その為には燃料となる薪を一定量以上、くべておかなければならない。

しかし、多くの焚き火台(特にソロ用などと銘打ってあるものなど)は、この薪を一度に入れられる容量が少なく、燃焼維持に必要な熱量を保つには不十分なのだ。

これがどういうことに繋がるかと言えば、まず頻繁に燃料をくべ続けなくてはならないということだ。すると、、、

・火力が安定しにくくまた、持続時間が短い

・火から目と手を離せない

ということになり、その実害は以下のようなものになる。

(調理面)
1、火力が不安定で消えやすいので、網焼き料理や煮込み料理が上手に仕上がらない
2,焚き火の面倒に手間を取られて、料理の仕込みなどをする余裕がない
3,薪投入の為、調理中の鍋や焼き網を頻繁に外したり置いたりする必要がある。

(暖房面)
1,溜め込める熾火の量が少なく、火力が弱いので、そもそも(あまり)暖かくない
2,火力がすぐに落ちて寒くなるので、焚き火台が唯一の暖房の場合、一晩中薪をくべ続ける必要がある(特にソロキャンプでは睡眠がとれない)

3,複数人数で暖まろうとすると、密集して狭苦しくなる(これがメリットの場合もあり)

(照明面)
1,そもそもの火の大きさが小さすぎて、暗い(乗せられる薪の量による)
2,すぐに光量が落ちて暗くなってしまう

焚火台の多くは、野外への持ち運びを念頭にデザインされているため、嵩張って大型になるデザインのものは殆ど存在しない。大きくて重いと売れないだろうという販売メーカーの戦略もあってのことだろうが、これが、焚き火台が野外生活の道具として甚だ使いにくい1番目の理由だ。

構造・形状

また、大きさとともに厄介なのが、構造や形状の問題である。これは台の開発コンセプトにより一長一短があるので、製品に依りけりになるが、概ね以下のような弱点が挙げられるだろう。

・調理や暖房などの目的別に沿った燃やし方をするのに、薪が組みにくい
・火床(炭や熾火が溜まる面)が平面でなく、熾火の量や位置を調節しにくい
・火起こしの際の風を入れ込みにくい。逆に風が強い時には火が暴れる
・燃えてバランスを失った薪が地面に落下したり、芝生を焦がすなど、焚き火台の目的である地面の保護にならない
・作りが貧弱・強度不足で不安定な為、倒れる可能性があり危険
・素材に蓄熱・保温性が殆どない為、(デザインによっては)温度が下がりやすく、結果、途中で消えてしまいやすい

(調理面)
1, 鍋や網を乗せにくかったり、不安定でひっくりかえす恐れがある。
2,火加減を調節しにくい(その為、トライポッド等の別器具の利用が必要)
2,焼き台が狭く、複数の調理が同時に行いにくい

(暖房面)
1,台が宙に浮いた構造の場合、足元が寒い
2,台の形状によっては、熾火から発せられる熱が自分に届きにくい
3,赤外線を一方向に集中させるデザインでない場合、無駄な方向へ熱が逃げる

(照明面)
・薪を立てて置きにくい形状の場合、炎が上がりにくくまた、上がっても小さいので、暗い

というようなことで、焚き火台には実用面でこのような問題点があるのをご理解頂けただろうか。

焚き火台のメリット・コンセプト

但し、デメリットばかりを並べてはいるが、状況によっては焚き火台の方が便利という点も存在する。

今更、言うまでもないとは思うが、焚き火台のメリットとして挙げられるのは、、

1,不意の悪天候時に、タープの下へ焚き火を避難させやすい
2,後片付けが楽
3,きれいな芝生の上などでも焚き火ができる

というようなものだ。さらに付け加えれば、それぞれの台が持つデザインコンセプトが必ずあるので、目的に合う使用法であれば、むしろ高性能で便利だったり、初心者でも扱いやすいということになる。

例を挙げるならば、バックパックを背負ってのソロキャンプに特化したデザインならば、他の機能を犠牲にしてもまず、軽量コンパクトに重点を置いているので、持ち運びが楽ということになる(その代わり、料理の際には小さな鍋一つ置くのがせいぜい、、ということになるが)

理想としては、大きさや形を自在に変化させられる焚火台があればこれはもう無敵なのだが、そんなものがあるはずもなく、また存在したとしても今度は重くて実用性に欠けるという事になるだろう。

いずれにしても、焚き火台の弱点は大きさとカタチが決まっていて、自由に変化させられないという点に集約されてくる。

これは、自然にあるものを自在に組み合わせて行う直火の焚き火には決して敵うことのない、永遠の宿命だ。

無論、焚き火を遊びの為と割り切って行うなら、こうした使いにくさはさほど問題ではないだろう。薪をくべる行為自体の楽しみや、火をいじって燃え方を変化させる喜びは、実用とはまた別の次元の話になる。

なので、生活の為の火を燃やす道具として焚き火台を使う(あるいは使わざるを得ない)前提ならば、そのキャンプにおける焚き火の役割に合わせた焚き火台をチョイスして持参することが必要だ。

するとまた、色々な焚き火台を買うことになり、懐具合や自宅の収納スペースが心配になるのだけれど、、、

 

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