古来の日本人はどんな道具を使い、どのような知恵と工夫で旅をしてきたのだろう?
西洋の野営技術が流入し、レジャーとして広まったことが源流の、現在の日本のアウトドア文化。
しかし、その国独自の土地・風土に適した技術や装備が世界中にあるように、日本にもオリジナルの野営用品とその使用方法があるんじゃないか?
そんなように以前から思っていたところで目に留まったのが本書だった。
和の道具の使い方 野遊びから防災まで
著:平山隆一 並木書房
風呂敷やふんどし、ゴザなど 、古くから伝わる道具の歴史、使い方。
また、それらが進化した近代の装備までが、種類毎に解説されている。
その上でアイテムそれぞれの特徴、長所と短所、応用法が説明されており、物の本プラス、アウトドア・サバイバルマニュアルといった内容。
今現在でも、その知恵を最新の道具に応用することで、アウトドアで役立てられる、野外の知恵が学べる。
面白かったのは、現在、山岳用食料として販売されているアルファ米(水を入れて戻すだけで食べられるご飯)のルーツ。
既に、古事記の中でヤマトタケルノミコトの東征に関する記述に記されているそうだ。
干飯と呼ばれ、戦国時代の武士の携帯食料として存在したことは知っていたが、そんなに古くからあったものだとは初耳だった。
家庭用の電子レンジで作る干飯の方法も紹介されているので、わざわざ金を払ってアルファ米を購入しなくても済ませられる。
物がなく、優れた素材も、高度な生産加工技術もなかった遥か昔の旅。
野山で野営する為の道具は、極シンプルなものしか存在していなかった。
それらをいかに様々な用途に応用するかという、先人が持っていた知識や技術は、現在ではサバイバル技術に分類されている。
そう考えると、大昔の人々の普段の生活がアウトドアライフであり、誰もが野外生活の達人だったことを再認識した。
今でも田舎に暮らすお年寄りの中には、キャンプ生活に直結する知恵や技を沢山お持ちの方が大勢いらっしゃる。
そんな方にお会いする度、自分がまだまだだな~と思うと同時に、新知識をゲットできた喜びも感じるのである。
日常生活の身の回りにあるものも、知恵と工夫によっては、十分にアウトドア用品に応用できることに意識を向けてみる。
そういった意味では、この本にある野外用具の使い方を知ることで、自分のアウトドアスタイルに合った、より合理的な装備を見直すきっかけになると思えた。
野外生活読本として、また日本の古い文化を知る面白読み物としても興味深い1冊なので、是非ご一読を。
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