マッチの需要は年々、減少傾向だそうだ。
煙草を吸わない人が増えたことも関係してか、近年、その生産量は激減していたらしい。。
つい1ヶ月ほど前には、国内最大手のメーカーが、製造を終了したとのニュースを見かけた。
アウトドアシーンで点火が必要な場面が多いのは、経験者ならお解りの筈。
焚き火は勿論、ガスバーナーやランタンなど、野外では何かと火を使うことが多い。
しかし、マッチより使い捨てライターを、火種としてチョイスする人は多い。
また、元からバーナー、ランタンに着火装置がついていたりするので、マッチの出番がますます無くなっている実感は、だいぶ前から感じていた。
火起こしをする際、初心者でも火を付け易い小枝の組み方の基本型が、ティピー型と言われるもの。
中心に枯葉や紙くずなどををセットし、その上に小枝を積んでいく形の焚き火だ。
ここへ火を放つ際、点けやすいのはマッチ。
中心部に置いた紙や枯葉の火口へまず火を点けるのだが、慣れないと、周囲の小枝などが邪魔をして火をつけにくい。
実際にやってみれば解るが、中心部まで火を届けるのが、結構難しいのだ。
この時、ジッポーやガスライターでは、本体を横に寝かせても火が上に伸びてしまい、指が熱くて持てなくなってしまう。
最悪、慌ててしまい、折角組んだ小枝のピラミッドを崩してしまうことも良くある話だ。
ところが、マッチならば軸を水平にすることで、焚き付けの中心、奥の方まで火を届けることができるという利点がある。
BBQ等で定番のチャッカマンなど、首の長い点火具というのは、こうした理由からデザインされていると思われる。
ただその前に、マッチの扱いを知らない人が多いという基本的な問題もある。
実際、冒険会でのキャンプでも、火起こしのために参加者へマッチを渡しても、持ち方が怪しい人が多い。
そして、おっかなびっくりといった様子で、上手く擦ることが出来ないのだ。
野外でマッチを擦る際は、風で火が消えないよう、着火したらすぐ、保護してやる必要がある。
具体的には、、
1、親指、人差し指、中指の3本でマッチの軸の端(尻)を摘み、頭は掌の内側に来るように持つ。
2、左手に持ったマッチの箱の擦り薬に、マッチの軸先端の火薬を、浅い角度で素早く叩きつける。
3、着火したら頭を下にして軸に火が良く移るように持ち、両手をやや丸め、その中でマッチの火を保護する。
この時、重要なのが1、の持ち方だ。
頭が掌の内側に来るように持っていないと、掌の中で風から守るポジションを取ることが出来ない。
また、裸火が肌の近くにあるという本能的な恐れから、火がつくとすぐに、焚き火の中へ無造作に突っ込もうとする傾向も見られる。
指を焼くほど軸が短くなるのに、実際は10秒近くはかかるのだが、これも扱った経験の少なさからくるものだろう。
コツとしては、火が付いたら慌てず落ち着いて一呼吸置き、しっかり軸に火が移ったところで、スッと火口へ差し込むことだ。
ところで、マッチもライターも、弱点は濡れると火が点かなくなってしまうところ。
ライターはフリントと呼ばれる擦り石が乾けば再び着火は可能。
だが、マッチはその火薬に含まれる成分が水溶性の為、一度濡れると使い物にならなくなることもある。
(多少の濡れ具合ならば、再び乾燥すれば使える)
この弱点を克服するために、アウトドア用のマッチの中には、防水加工が施されたものが売られている。
が、、わざわざ金を出さなくても、この防水マッチは自作可能なのだ。
作り方は簡単で、ロウソクに火を点け、溶け出したロウをマッチの頭に垂らすだけ。
マッチの火薬部分をロウでコーティングするという訳だ。
実際に使う際には、頭の先端についたロウを少し、削り落としてから擦り薬でこすってやらなければならない。
(こうしないと擦り薬がロウで塗り潰されてしまい、火が点かなくなる)
単純な作りで、機械モノのような故障も無く、安くて軽量。
濡れさえ防げば確実に火を生み出すことのできる、偉大なアイテム。
古代の人が、火を得るためにどれだけの苦労を強いられ、またそれが故に火をいかに大切にしたか。
災害のような緊急事態だけでなくアウトドアでも、生きる為に必要不可欠な”火”を得るのに、こんな有難い道具はなかなか無い。
凝った技術よりも、シンプルで確実なものがいかに大切か。
そんなことを改めて感じさせてくれる道具だ。
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