なんとなく、、や、どこでもいいと思ったら大間違いの場所選び
管理されたキャンプ場、あるいはそれ以外の自然の中でも寝泊りする際に重要な野営スキルの一つが、キャンプ地選びだ。
何となく良さげな場所を見つけた、 あるいは有料できちんと管理されているキャンプ場であっても、どこでも問題ないだろうと思って場所を選ぶと、快適に過ごせないだけでなく、時には危ない目に遭うことすらある。
特に 初心者のうちは目利きの難しさもあって、ある程度綺麗で地面が平らそうな場所ならどこでもOKと思ってしまいがち。
しかしこれがその日のキャンプの楽しさやしっかりした睡眠を妨げたり、場合によっては命の危険を招きかねない
(実際、近年ではキャンプ場内の樹木が倒れてテントを押しつぶし、死亡した例もある)
家を建てるとき、まず地盤や土地の条件を調べるように、どうキャンプ地を選ぶかは野外生活の重要なファクターなのだ。
前編の今回は特に、キャンプ地選びのキーワード「安全性」にフォーカスし、次に紹介する6つのポイントを押さえて危険を大きく減らすコツについて説明したい。
”安全性”と”快適性”がキャンプ地選びのキーワード
では、具体的にどうやって場所を選ぶためのコツになるが、これは2つの基準で考える事で整理しやすい。
1,安全性
2,快適性
まずは“安全性”だ。これは何をおいても確保すべき重要ポイントなので、第一優先でクリアする必要がある。
その上で、2番目の“快適性”が確保できる場所を見つける手順を踏むこととなる。
尚、常に完璧に条件の整った環境が見つかるかと言えば、現実的にはかなり難しいものでもある。
しかしそれでも安全性には出来るだけの注意を払い、あとは限られた条件の中で最大限、ベストな場所を選ぶべきだ。
チェックすべき安全性の項目
では、今回のテーマである”安全性”にかかわる項目だが、以下のようなものになる。
1,河原の増水の危険を見極める
水が得られ、また入り組んだ渓谷などでも比較的フラットで日当たりが良いなど、キャンプ場所に適していることが多いのが川沿いだが、怖いのが急な増水だ。
特に夏場などは、川の上流でゲリラ豪雨が降ると数時間後に一気に増水する危険が考えられる。
この危険を避けるには、川岸に残された過去の増水サインを探すことだ。
岸辺に生えている樹木が同じ方向になびいて倒れている高さや、宙に浮いて木の枝に引っ掛かっているゴミなどは、以前にその高さまで水かさが増したことを示している。
なので、それを基準に、その高さ以下の場所にはキャンプサイトを張らない事だ。
無論、可能性としてはそれ以上のレベルの増水もあり得るので、安心しきらず、天候と目の前の川の水かさを常に気にかけておく癖は、アウトドアマンとして必要な素養になる。
加えて、万が一増水した際に、避難脱出できる場所とルートを必ず確保しておくこと。
そして、昼間の明るいうちに必ず、そのルートを歩いて確認する。
真夜中に、急いで足元の悪い斜面を駆け上らなくてはならないような状況もあり得るのだ。
尚、広い川幅の地形で、中洲に設営するのは絶対にアウト。増水したら逃げることはほぼ不可能だからだ。
2,がけ崩れや岩の転落を避ける
両側を急な斜面に挟まれたような川沿いや山間部では、崖崩れや落石にも注意が必要だ。
雨が続いた後などは地盤も緩んでおり、加えて地震の揺れに見舞われたりすれば、一層その危険性も高まる。
その為、過去に土砂崩れが起こった跡が残る箇所や、あまりにも急峻な斜面の直下は避けるようにしよう。
具体的なサインは、山の斜面の一部だけに木が生えておらず、スキー場のようになっていたり、一番下に押し流されてきた樹や岩が溜まっているような場所だ。
また、唐突に大きな岩が転がっている(それもまだ苔蒸しておらず新しい)のは、最近落ちてきたものである可能性が高いので、そういう場所も危ない。
無論、人のアタマ程度の大きさの岩でも、勢い良く落ちてくれば、場合によっては致命傷になる。
出来れば設営ポイントは斜面の下端からある程度距離を置いた場所に設定したり、斜面とテントの間に大きな樹木や岩などの障害物があればより良いと思う。
3,木の枝の引っかかりや枯れ木に注意
これも良くあるパターンで、樹々に囲まれたキャンプ場などでも起こり得る。
台風など強い風が吹いた後などに、折れた枝が上空の樹の枝に引っ掛かっているのだ。
下から見ていると大した大きさに見えないのだが、実際には人の腕より太かったり、長さが2~3mもあることもあって、そんなものがアタマに当たったらと思うと、ゾッとする。
なので、場所決めの際にはテントの直上だけでなく、その周辺の生活エリアも含めて、上に落ちてきそうな枝が無いか確認が必要だ。
逆に樹々が込み入っている環境では、横に伸びた木の大枝が落下物から頭を守ってくれるバリケードになるような、大木の根元を選ぶのも一つの方法だろう。
そして、大きな枯れ木にも注意が必要になる。
手で押しただけで揺れる様な木は、何かの拍子に倒れてくる可能性があり、特に木の重心が偏っている方向には設営を避けるべきだろう。
多くの場合、枯れ木にはキノコが生えていたり、周りの樹木が緑の葉を茂らせているのに、その木だけは葉がついていなかったりするので、見分けるのはそう難しくはない。
4,大波の危険のある海沿い
夏のキャンプと言えば、ビーチでのキャンプに想いを馳せる方もいるかと思うが、ここでの注意点は、まれにある大波と、強い風だ。
砂浜を見れば寄せた波の跡はすぐわかるので、そこより上にキャンプエリアを設定すればOKと思い込みがち。
だが、日付や時間帯により、引き潮と満ち潮でそのラインは変わってくるし、大潮の日などはその増減が著しいので、必ずしもそこが安全ラインとは言い難いのである。
そして、ここで一番怖いのが何万回かに一度くらい起こる大波だ。
天気予報などで見ることのできる波の高さは、有義波高と呼ばれるもので、予測される最大の波の高さでは無い。
よって、その高さを超える大きな波がまれにやってくることがあるのだ。
これに沖から吹く強い風が加わったりすると、予想以上の場所まで到達する。
ということで、安全マージンを見越して、ビーチで設営する際には、波の痕跡ラインよりも遥かに内陸に引っ込んだ場所を選ぶようにしたい。
そしてむしろ、波打ち際の近くに設営するメリットは少ない。
現実的には背後に防風林などがある場所の方が、強い風が吹いた際にも林の中に逃げ込んだり、樹々を利用して風除けを作る、薪を集めるなど、何かと都合が良いことが多いからだ。
5,山での強風を避ける
山に登って景色の良い場所にテントを張り、コーヒー片手に昇る朝日を眺めたいという気持ちはよく解る。
けれど、基本的に山は風が強く、ましてや頂上付近は吹きっさらしのような場所もあって、強い風に対する備えも考える必要がある。
自分の身が吹き飛ばされるだけでなく、装備やテントを失う事は遭難の引き金にもなるのだ。
特に崖の上のキワのような場所に設営すると、風にあおられてバランスを崩し崖下に落ちかねないので、ここは安全優先で少し離れた場所を選びたい。
また、しっかりとしたペグダウンは無論、出来れば岩などを使い風除けを設ければ、安全対策だけでなく、寒さ対策にも有効だ。
6,開けた場所での落雷
猛暑が続いている近年では特に、夏場のキャンプで考えたいのが落雷だ。
いったん雷が鳴り出したら、逃げ込める先が無いような場所を選ぶのはNG。
周囲に高い樹々などが無い山岳地や、開けた草原のような場所でテントのポールのような避雷針になりかねないものが乱立していたら、危険度が上がるのは当然の話だ。
よって、落雷の危険がある時期や場所でキャンプ地を選ぶなら、そもそも開けた場所は避け、またもし雷が鳴り出したら、避難できる場所があるのかをチェックしよう。
また、良く言われるように車の中へ避難すれば、万が一雷が落ちても、人命にダメージは無いことが、JAFの実験結果で判明している。
しかし、これも100%では無いとのことなので、車内避難はあくまで緊急時の次善の策という事にして、原則は正しい場所を選ぶことが重要だ。
行動のコツ―“2時間前到着ルール”
ここまで読んで「気をつけることが多すぎる!」と思った方もいる事だろう。
だが実際はシンプルで、日暮れ2時間前までに現地に入り、周囲を歩いてチェックすること。これを習慣にすれば大半の危険は避けられる筈。
次回の後編では、快適に過ごせる場所について解説していく予定だ。