キャンプ設営の第1歩となる、場所選びの基本についての話の後編。
前編ではまず、どんな場所が危険で、どこを避けるべきかという安全の基本を扱った。
今回はその続きとして、安全が確保できた後、どうすれば快適に眠れるキャンプ地を選べるのかを解説していく。
外で過ごす時間を存分に楽しめるかどうかは、最終的には夜にどれだけ眠れるかにかかっているといえる。
慣れない環境で寝不足になれば翌日の楽しさは半減し、判断力や体力にも影響が出る。
登山や自転車旅なら、こうした疲労が事故や遭難の引き金にもなりかねない。
また防災時の避難生活を考える上でも、“眠れる環境を確保する”という行為は自分の生存環境を整える重要な技術といえるだろう。

快適性”に関わる5つのチェック項目
1,斜面を避け、水平な場所を選ぶ
当然ながら傾斜のある場所は、立っても座っていても、安定性に欠ける。
昼間に立っていると気づきにくくても、横になればその傾きは体に大きく響く。
そんな場所にテントを張ろうものならば、寝にくいだけでなく、寝ている間にマットからずり落ちていたり、シェルターなどの場合には外にはみ出したりすることもある。
実際、私も初心者の頃に「この程度ならいける」と設営したわずかな傾斜で、朝起きたら寝袋ごと下へずり落ちていた経験がある。
あれでは疲れが取れるはずがない。
野営時の眠りにおいて、地面が水平であることは重要事項といえる。
2,地面の凸凹は眠りの天敵
ただ立っているだけではさほど気にならない地面の凹凸や、ちょっとした障害物(小石や木の根のでっぱり等)も、地面に横たわると些細な感触が気になり眠りを妨げてしまいがち。
なので、テントを張る前に必ず地面を手で触れ、足で踏みしめて確認したい。
動かせる石や枝はどかし、整地できる箇所は整えておく。
このひと手間で、その夜の眠りの質は大きく変わる。

3,水が溜まる場所や“水の道”は避ける
地面が窪んでいる場所が水たまりになることは気づきやすいが、晴れていると見えない“水の通り道”にも注意したい。
地面の僅かな凹みが連続している場所では、雨が降ると細い流れが生まれることがある。
そのような場所にテントを設営した後、夜中に雨が降ると、眠っている最中に水かさが増し、寝袋がビショビショになってその冷たさで目覚めるまで気が付かない、、という事態になる。
そうなると、もうその晩はろくに眠ることができなくなるだろう。
なので、地面をよく観察し、何なら少し高くなっている場所を選ぶのが良策だ。

4,風の影響を避けられる場所を探す
アウトドアで厄介なのは、実は雨よりも風だ。
強風下ではテントは揺れ続け、焚き火は火の粉や煙が舞い安定せず、落ち着いて過ごすことが難しくなる。
なので、出来るだけ風の当たらない場所を選ぶことが、リラックスしてキャンプを過ごす為には重要なポイントだ。
具体的には、風上側に密集した樹林や崖、建物、土手などの風を弱める障害物がある場所を選ぶことで、その影響をかなり緩和させることができる
もしそうしたものが見つからなければ、タープを風上に斜めに張り、風を逃がすようにする方法もある。
地形の読みとちょっとした工夫で、快適性は大きく変わる。
5,日当たりを読むことで快適さが変わる
季節によって“快適な日差し”は変わる。
夏は日陰がありがたいし、寒く日の短い冬には少しでも陽が当たる場所のほうが暖かく、明るく過ごせる。
設営の際、太陽の位置や沈む方向を意識してみるだけで、眠りの質も翌朝の気持ち良さも変わってくる。
まとめ―完璧さより、“理由のある選択”をする
以上が快適さを得るための主なポイントではあるが、残念ながら全ての条件が揃った理想の場所に出会えることは殆ど無いのが現実だ。
だからこそ重要なのは、その日の天候、風、地形を見て、自分なりの優先順位でサイトを選ぶことになる。
「今日は風が強く、雨の心配は少ない。ならば多少の窪地だろうが風の当たりにくい風下の場所を優先しよう」
こうした判断の積み重ねが、確かな野営スキルを育てる。
レジャーキャンプでも、防災時の避難でも、旅でも、 “どこでも眠れる環境を自分で整える力”は、生きる力の大きな柱である。
快適さは贅沢ではない。自分を守る技術だといえる。
いつでも、どこでも、ちゃんと眠れる。そんなタフでワイルドな自分になりたくはないか?
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