大人向けキャンプ・焚き火・アウトドア体験創造集団「週末冒険会」
コラム

真夏の災害時に水はどうする!?(後編)

猛暑のこの季節に災害で断水・水不足に陥ったらどうするか?をテーマにお送りしているこのコラム。

前編でお伝えした基本原則の備蓄・節約に続き、後編の今回は、どうやって水を得るか?という補充の方法とリアルに迫ってみる。(コラム前編はこちら

 

都市部の水源の危うさ

都会で水源を探すとしたら、どんなものがあるだろうか?

通常思いつくのは川や池、ちょっと頭を捻って雨水や湧き水、井戸あたりだろうか。

また防災意識の高い方は、自宅で溜めておいた風呂の残り湯なども選択肢に入ってくるかもしれない。

しかし、これらのどれも、そのまま飲み水として使う事が危険な事は明白だ。だとすると、何かしら手を加えて安全な水へと生まれ変わらせる必要がある。

よくアウトドアで用いられる水の浄化法としては、主に以下のようなものが挙げられる。

1,煮沸消毒
2,ろ過(浄水器)
3,薬品による消毒


災害時に浄水器は役に立たない?!

けれども、上記の手法が通用するのは、そもそもの源水に含まれる危険物質が、自然由来のもの(微生物、菌、バクテリア等)の場合だ。

逆に言えば、化学物質や重金属、油などが含まれた水には効果が無い、または極めて限られてしまうのが事実だ。

煮沸や消毒ではこれらの物質を無害化することはできないし、浄水器もごく一部の高性能機種以外は、重金属類をろ過することはできないからである(特に災害・アウトドア用のポータブルな物ではほぼ不可能)

大災害時を想定すると、都市部の川では流域にある倒壊した工場などから汚染物質が流れ込むかもしれない。
また、車両が橋から転落して油が流れ出しているようなことも考えられる。

公園の池なども、変な化学物質が流れ込むような立地ではないとしても、普段からどんなものが投げ込まれているかわからないというリスクはある。

そうした水を上記のような手段で、本当に安全なレベルにできるのか?と言われたら、私はイエスと答える自信はない。

という訳で、都市部でこうした浄水の方法が通用するのは、極めて限定された水源だけという事になる。

 

都会で使えそうな水源はどこにある?

では、危険が少なく(完全に安全と言い切れる水源は無いので)浄水すれば飲めそうな水源はどんなものがあるのだろうか?

1,雨水

降り始めの10~15分を経た後の雨水は、空気中の有害物質も落ちていて、かなり安全。
問題はいつどこで、どのくらい降るか予測がつきにくい点。

2,湧き水

山奥まで出向かずとも、人口の多いエリアでも湧き水が汲める場所は存在している(例:関東湧き水マップ

欠点は地域差があることと、災害時には人が集中する可能性が高い事。また安全性の保証がないことなど。
普段から地元の湧き水の場所をチェックしておくのは有益だろう。

3,風呂、給湯器、トイレタンクなどの残留水

これらの水は上水道から供給されている為、安全性が高い。
しかし、残っていても量が少なくまた、日数が経っていると汚染している可能性も出てくる。
またトイレタンクの水は洗浄剤などが入っていないことが条件。

4,マンションの屋上貯水槽

今はかなり数が少ないと思うが、屋上に貯水タンクがあるタイプのマンションならば、タンク内に水がある限りは自重落下方式で水が供給される。
なので、蛇口を捻れば水が得られる可能性がある(建物内部で水道管が断絶していたらアウトだが)

5,地下街や大型商業施設の非常用貯水槽

こうした施設では、防災用に飲料用水を備蓄しているケースがある。
だが、もしこの水を利用できるとなれば、施設管理者による公平な配布が行われるはずなので、大量に確保することは現実的ではないと思われる。

そして、いよいよこうした水源も見当たらない、または使えないとなれば以下のようなものも考えられるが、リスクが高くなったり、また現実的で無いモノも出てくる。

・マンションやビルの防火水槽

こうしたビルには消防用水として大量の水が溜められている場合がある。
しかし、元々が飲用ではないことと、ビルの管理者でないと貯水槽へのアクセスの仕方が解らない、場合によっては許可が必要等の問題がある。

・川、池など

先ほども書いているように、こうした水源にはどんなものが混じっているかわからないので、安全と確認できる根拠があるか、よほど状況が切迫している(汚染水のリスクよりも脱水のリスクの方が高い場合)際の最終手段。

 

水が尽きる前に脱出を

ここまでを読んで、正直、こんなの無理だわ、、と思った方も多いのではないだろうか?

実際、ここまで述べた方法は安定性・継続性を欠き、また労力もかかる上に得られる量も多くない方法も含まれている。

それが示すのは、水を得られない場所でサバイバルし続けるのは不可能という事実だ。

無論、これは災害の状況にもよる。被災の度合いが比較的軽度で、救援がある程度見込めるようならば、その場に留まる方が賢明かもしれない。

 

しかし、暑さで水の消費が激しく、しかも物資の救援もいつ、どの位届くかわからないといった状況ならば、早めに手を打つことが次の戦略になる。

ジリ貧になって水を使い切る前に、きれいで豊かな水源のある場所へ脱出することを考えるべきだ。

具体的には平時から、都市部から離れた逃げ場所を確保しておくこと、そしてそこまで辿り着く為の移動手段の準備、ルートの検討を行っておくこと。

脱水や熱中症は、重大な問題だ。
特に医療機関にも頼れない災害時では、平時では軽症で済むものも重症になりかねない。

 

災害時に安全な水を確保する難しさ。
これは食料やトイレ問題よりも優先して考える必要のある、大きな課題だと知ってもらえたら幸いだ。

 

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