大人向けキャンプ・焚き火・アウトドア体験創造集団「週末冒険会」
コラム

寝袋を選ぶポイントと考え方

キャンプを始めようと考えた多くの方が、まず購入を検討する装備の代表格が“寝袋”だろう。
しかし、それだけベーシックな野営用具であるにも関わらず、これほど選び方に迷うアイテムも珍しい。

特にビギナーにとっては、最初に揃える道具なのに、そのチョイスにはある程度の知識と経験が必要というジレンマを含んだ、厄介なアイテムでもある。

何せ寝袋の性能は睡眠の質に直結し、またモノによっては数万円の出費を強いられることもあるだけに、何となく、、や、有名ブランドだから大丈夫だろう、、などという曖昧な理由で決める事はリスクが大きすぎるのだ。

ということで、今回は「寝袋の形と素材(中綿)」「保温性の指標とその読み解き方」「実際の選び方のコツ」について詳しく解説。

これからキャンプ用品を揃えようという方だけでなく、今、自分が所有している寝袋に満足していないという方も、改めて自分の装備を見直す参考として頂ければと思う。

 

1,寝袋の基本形状:マミー型 vs 封筒型

寝袋はまず「形」で使い勝手や保温性が変わり、以下の2種類に分けられる。

◎マミー(ミイラ)型(細身で先細り)
身体にフィットする形状で、内部空間が少ないため暖かい空気が逃げにくく、保温性が高いのが特徴。
表地、中綿とも必要最小量で構成されているため、軽量・コンパクトで携帯性にも優れている。

その為、荷物を少しでも軽く、嵩張らずに持ち運びたいスタイル(バックパックや積載量の限られる自転車やバイク等)や、保温性重視のキャンプ(寒冷地や登山での野営など)に適している。
しかし、その特徴があだとなり、デメリットとして寝返りしにくい点や窮屈に感じる可能性もある点に注意が必要。

◎封筒型(四角く広め)
布団を縦半分に折り、サイドと足元にジッパーを付けたような形で、ゆったりとした寝心地が魅力。
このジッパーを空けて広げれば、掛毛布としてやテントの床に敷いて使う等の汎用性もメリットに挙げられる。

ただし、内部に隙間が多くなる分、熱が逃げやすく、また生地や中綿もふんだんに使われているので重く、かさばりがち。

よって、保温性をあまり重視しない暖かな季節や車中泊、重さや嵩張りがデメリットになりにくい、車で荷物を運べるファミリーキャンプなどに適している。

 

2,中綿の違い:ダウンと化繊、それぞれの得手不得手

寝袋の「中綿(中わた)」は、その性能の根幹で、大きく分けると2種類が存在する。

◯ ダウン(羽毛
軽量で保温性が高く、収納時も非常にコンパクト。長期縦走や冬季野営では非常に有益な素材だ。
ただし、濡れると保温力が一気に落ちるため、雨や湿気の多い環境や結露には注意が必要で、価格も高めの場合が多い。

また、袋に詰めた(圧縮した)状態で保管すると保温性能が損なわれるため、自宅では天井などからフックで吊り下げるか、大きな袋にふわっとした状態で入れて収納しておく必要があり、保管に場所を喰うという欠点も持ち合わせている。

尚、ダウンには「フィルパワー(Fill Power、FP)」という品質の指標が存在する。
これは羽毛1オンス(約28g)がどれだけ膨らむかを示すもので、数値が大きいほど空気を含みやすく、保温性・軽さ・復元力に優れている。

◯ 化繊(ポリエステル綿など)
化学繊維を使った中綿で、その多くはポリエステルとなる。
水濡れに強く、濡れても一定の保温力を保ち、価格も安めのものが多いのがメリットだが、ダウンに比べて重く、かさばりやすい点がデメリット。

またメンテナンスや保管も簡単なので、オートキャンプなどの比較的ライトなキャンプや防災備蓄用、家族の人数分を揃えたいなどの場合に向いている。

 

3,見落としがちな「温度表記」の読み方

寝袋選びの最重要ポイントともいえる暖かさ。
このレベルを表す為、ある程度きちんとしたメーカーの製品には、どのくらいの気温で使えるかを示した数値が表記されている。

しかし、寝袋選びで最も誤解されやすいのがこの温度表記なのだ。
この数値は欧州規格EN13537(またはISO23537)に基づいて計測されており、以下の3つの温度帯が記載されている。
例えば「T-comfort:5℃、T-limit:0℃、T-extreme:-10℃」という表示があれば、快適なのは5℃以上、0℃では何とか耐えられるが快眠できない、-10℃はギリギリ生存レベルという意味になる。

そして、寝袋の保温性や快適性は、数値だけで決まるものでは無い。

最も注意しなければならないのは、上記の数値はあくまでも参考数値であるということだ(実際に各寝袋メーカーもHPで注意喚起している)

この基準は、ユーザー個々の条件(男女差、体格、基礎代謝、暑がり/寒がり等)までは加味してくれないので、その差をしっかり考慮して寝袋を選ぶ必要がある。

しかし、購入する方としては、じゃあどうしたら良いの?という話になってしまうので、私は寝袋を選ぶ際のアドバイスとしては

・「T-comfort」を基準として選択
・実際の最低気温に対し、+5℃くらい余裕を持つものを選ぶ

とお答えしている。
多少暑い分には、ジッパーを空けるなどで対策可能だからだ。

 

逆に、寒さを恐れて安心マージンを取り過ぎ、例えば+10℃の余裕を見た寝袋を購入すると、今度はデメリットも増えてくる。

充分に暖かい寝袋は、寒冷期には確かに快適かもしれないが、それ以外の季節には暑過ぎて使いにくい。
また重さも嵩張りも必要以上になり、加えて価格もより高価ということになってしまうからだ。

多少の寒さを乗り越える方法としては、寒冷期の過ごし方のコツを工夫することである程度までは十分、過ごせるようになる。
詳しくは下記のコラムでご紹介しているので、参考にして頂きたい。

週末冒険会コラム:冬キャンプで温かく眠るために  ソロキャンプでの寒さ対策

暖かいが高額で、年に何回出番があるかわからないダウン寝袋を、狭い自宅で邪魔になりながら保管しておくよりも、こうしたスキルを持ち合わせることで、費用をかけずに乗り切ることは可能だ。

 

4,最後に:経験が、あなたの快適温度を教えてくれる

家庭用の布団でも同じことが言えるように、夏冬万能な寝袋は存在しない。
気温、個人差、装備の運搬手段、使用環境などに合わせ、異なるモデルをチョイスする必要はどうしても出てくるだろう。

「寝袋選び」はキャンプ装備の中でも“感覚”と“経験”が大きくものをいう分野。

その為に、冒険会では初めて参加される方などに無料貸し出ししている寝袋は、数種のブランドの異なる温度帯のものを準備して、体感して頂けるよう配慮している。

そして、自分の必要スペックをある程度でも感じ取ってもらえた後、購入に繋げて頂けるようにしている(寝袋は高価なものも多い為、購入に際して個別無料アドバイスもあり)

ぜひ、週末冒険会の野営で体験し、自分にとっての“快適な夜”を発見してもらいたい。

■併せて読みたい関連記事■
キャンプでの安眠のコツ10選

 

命を繋ぐ技・技術・思考を養う
⇩ ⇩ ⇩

関連記事