焚き火を野外生活でいかに上手く利用するか?ということで、前回からシリーズとしてお送りしているこのコラム。1回目は野外料理の為の焚き火について書いてみたが、2回目の今回は、暖房としての焚き火に焦点を当てて見たいと思う。
⇒ 生き抜く技としての焚き火Part1-野外料理に向いた焚き火
だが、焚き火でいかに体を暖めるか?という今回のトピックではあるが、まず大前提として認識しておいてもらいたい事がある。それは、、
”野外では、熱を受けるよりも熱を逃がさないことの方が重要”という事実だ。
寒いキャンプの夜、焚き火の側に寄れば、当然暖かさ感じる。しかし、その暖かさは焚き火に向いている側の体の表面だけで、火に当たっていない反対側の体表が寒い、、という想いをしたことがあなたにもあるのではないだろうか?
寝る前に冷えた体を焚き火で暖めてから寝袋に入ろうと思うのだけれど、熱くなるのは足の脛や顔ばかりで、なかなか体の芯まで暖かくならず、いつまでたっても火の側から離れられない。。
結局、エイヤっと踏ん切りをつけて、素早くテントに駆け込むのが現実的だということに気付くまでに、結構な回数のキャンプを過ごすこととなる。
それでも比較的暖かい季節、春先や秋の中盤位までならば、焚き火で暖まることは可能だ。
何故ならば、気温がまだそこまで低くないので、身体から奪われる熱と焚き火から得られる熱の収支がマイナスとならないからである(それでも体の一部、例えば爪先や尻、背中などは冷えたままの場合が多いが)
解放空間で過ごすキャンプでは、家の中のように室温自体を暖めることが難しい。すると、焚き火が発する熱が暖めてくれるのは、火に当たっている自分の体の表面だけになる。そして、それ以外の冷たい空気に晒されている部分から熱が逃げていく。これが、野外で体を暖めることが難しい理屈だ。
ということで、一定以下の気温の元では、焚き火で暖を取る(取り続ける)のは現実的に不可能なのだ。
ということで究極の所、野外で暖かさを確保するのは、自分の衣類や寝袋ということを理解した上であれば、今回のテーマである、如何に焚き火で暖まるか?という話が活きてくる。
先ほど、焚き火で暖かいのは火に向いている側の体の表面だけという話をしたが、その火も、焚き火の燃やし方、組み方によって暖かさが違う。
その為のポイントは2つある。
1つ目は焚き火が燃えている面を、自分に上手く向けること。
2つ目は熱の反射を自分に向けること
1、燃えている面を自分に向ける
まず一つ目の、燃えている面を自分に向けるという話だが、焚き火の熱を感じる理屈は、熱源から発せられる遠赤外線が体表に当たり熱に変わるからだ。科学的には輻射熱と言われるものだが、これをいかにもれなく体で受け止められるかが重要になる。
その為には、赤く燃えている部分、具体的には燠火になっている部分や、炎が上がっている部分を体に向けるということになる。
やってみるとすぐに解るのだが、焚き火に薪をくべる時、炎の上に薪を乗せると熱がさえぎられて、暖かさを感じなくなってしまう。特に太い薪をくべた際にはこの現象が顕著になる。焚き火と自分の間に、壁を作ってしまう結果になるからだ。
同様に、石などでかまどを組んでいる場合にも、石が遠赤外線を遮る為、かまどの口が空いている側にいないと暖かくない。そうならない為に、焚き火の赤い部分が隠れないよう、自分に向けることが重要だ。このコラムの初めにある写真のような状態であれば、かなりの熱を受け取ることが出来る。
無論、盛大に大きな炎を上げれば、そこから生まれる遠赤外線の量も多くなるので、当然、暖かさは増す。しかし、現実的にはそれほど大きな焚き火を、しかも継続して燃やし続けるのは、薪の量からも、また周辺の他のキャンパーへの配慮などから考えても難しいだろう。
特に、ソロキャンプなどともなれば、持参したり拾ってこれる薪もそれほど多くはないのだから、いかに少ない燃料で、発生する熱(遠赤外線)を効果的に体に当てるか?がポイントになるのだが、その為に、次の熱反射がまた重要になってくる。
2、熱の反射を自分に向ける
先ほどの遠赤外線は、通常の焚き火であれば360度の全方向に放出されている。大勢で焚き火を囲んでいるのであれば、みんなが無駄なく、この遠赤外線を受け止めていることになるのでそれでも構わない。
しかし、少人数やソロで焚き火に当たっている場合には、自分たちのいない側に飛んでいる遠赤外線は無駄になっている。これを自分の方へ反射させることで、より効果的に暖を取ることが出来るようになる。
実際としては、石でかまどを組めるのであれば、それが良い反射材となるし、太めの薪や丸太が手に入るなら、それらを壁状に積んで、反射板(リフレクター)として使うやり方は、ブッシュクラフト愛好家が良く行っているやり方だ。
また、アルミやステンレスの金属は遠赤外線をよく反射させることが知られており、ホームセンターやドラッグストアで、キッチンのコンロの周りに設置する油跳ねガードなどを買っていけば、安価で軽量な反射板となる。
貴方が実際にこの焚き火による暖の確保を行う際には、先ほど書いた衣類による保温を確保した上で実行しないと、効果が上がりにくいだろう。また、冷えを増幅させる他の大きな原因である、風を防ぐことと、冷たい地面などに直接触れないよう、マットなどに座って断熱することも必要だ。
初夏のこの季節でも、夜になると冷えて焚き火の暖かさがありがたい事もまだまだ多い。
そんな時、今回の話を思い出してもらえたら幸いだ。
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