テント内は火気厳禁。キャンプの基本である。
とはいえ、吹雪の舞う冬期登山でのテント泊では、野外での調理など不可能。
なので、室内にガスコンロを持ち込んで調理したりするのは当たり前に行われている。
要は自己責任、状況に合わせ注意して行うというのが暗黙の了解だ。
何せ現代の軽量テントはペラペラのナイロン製が圧倒的主流。火が付いたらあっという間に燃えてしまう。
そうでなくてもCO中毒になる可能性が高いので、基本は火を使わないのが当たり前だ。
だが、例外的にテント内で火を使っても大丈夫なシステムがある。
それは、”キャンプ用薪ストーブ”だ。
作りは持ち運びが可能な大きさと重さ、そしてテント外に突き出せる煙突。
ひょうたん型のボディには、燃料を入れる為の開閉窓があり、そこには耐熱ガラスの小窓があって、内部の炎が楽しめる作りだ。
そして、ストーブの上面には大小の鍋が乗せられ、煮込み料理や焼き物をすることができる。
小窓から漏れるチロチロとした灯りがテントの中で揺れる。
薪が燃えるほのかな、あの独特の香りがテント内に漂う。
天板の上では鉄鍋がクツクツと静かに音を立てている。
トマトソースの美味そうな匂いが漂ってきたら、誰しもたまらずに蓋を開けてしまうだろう。
冬場のキャンプを諦めさせる最大の原因の、”寒さ”という問題の大部分を解決してくれる素敵なアイテム。
こいつを手に入れて、この冬の大きな楽しみがまたひとつ増えた。
弱点は数時間おきに燃料となる薪をくべてやらなければならないことだ。
熾(炭火)が内部に溜まり、薪ストーブの内部は高熱が維持されて燃焼効率が高くなっている。
その為、かなり太めの薪を投入しても、2時間程度で燃焼し尽くしてしまうのだ。
柔らかくて、その分火の付きは良いけれど持続力に欠ける素材は、薪ストーブには向かない。
普通のキャンプ場で販売されている、杉や檜の薪ならば20分と持たないだろう。
その点、オーナーが焚き火好き、あるいは薪ストーブのあるコテージなどがあるキャンプ場などなら安心。
そういった所なら、大抵は燃え上がりづらく、その代わりに火持ちが良いナラ、樫、栗などの固い素材の薪を販売してくれている。
こいつがあれば頻繁な燃料の補給に面倒をかけられることもない。
普通の焚き火をする際にも、こうした燃料の使い分けを覚えておけば、木の種類で火力をコントロールすることができるようになる。
初めは柔らく、引火しやすい杉の木で焚き火をスタートさせた後、ある程度、熾火が溜まって火力が安定する。
そうしたら固めの木を入れてやることで、ほおっておいても消えず、安定した炎を保つことができる筈だ。
もちろん、森で薪を拾う場合にも同様で、木の種類を選び分けて収集すれば同じようにくつろいだファイアータイムを過ごせる。
焚き火を趣味とするなら、是非使いこなして頂きたいテクニックである。
雪の積もる静かな森の夜、この薪ストーブの灯りを眺めながら、暖かい料理を味わう。
寒い冬だからこそ楽しめる、こんな幸せもある。
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