大人向けキャンプ・焚き火・アウトドア体験創造集団「週末冒険会」
コラム

薪と炭、焚き火の燃料はどちらが良いの?

キャンプやBBQをする機会が増えるこれからの季節、アウトドア好きはもちろんのこと、そうでもない方でも、年に1、2度のイベントとして、野外で火おこしをすることも出てくる時期かと思う。

となれば、そのための燃料として、薪や炭を購入することになる筈だ。余程アウトドアに慣れたメンバーでもいない限り、燃料は現地調達ではなく事前に購入するか、または現地の売店で買うことになるだろう。

だが、薪または炭を買う際、どちらも燃えるものだからと、何となく買ってしまってはいないだろうか?

キャンプ場やホームセンターで売られている薪や炭を見ても、焚き火の燃料としてあまり考えずに(あるいはよくわからずに)取り敢えずその両方を購入してしまった、、という経験をお持ちの方も多いだろう。

今回はこの炭と薪の違いと用法について少し解説してみたい。

なぜ炭は作られたのか?

同じ火を燃やすのならば炭と薪のどちらでも良いのでは?と何となく思われがちだが、この二つには用途により、大きな違いがある。

炭とは、木材に手間暇をかけて作られるものだ。ではなぜそんな時間と労力を注ぎ込み、燃やせば炭と同じように燃える木をわざわざ炭に作り換えるのだろう?

その答えは、炭の持つ燃焼特性に理由がある。

炭の特徴は、以下のようなものだ。

・煙りが出ない
・火の粉が出にくい
・異臭がしない
・炎が上がりにくい
・火力が安定している
・(薪に比べ)長時間燃焼する
・消えにくい

ここで焚き火で薪を燃やしている時のことを思い出して欲しい。そこからは何が出ているだろうか?

そう、まず出ているのは煙だ。この煙の正体は、木の中に含まれる水分や一酸化炭素などのガスで、目に染みるし、吸いこめばむせて、酷い場合にはCO中毒を引き起こす。

次に焚き火から出るのが火の粉だ。パチパチと宙に舞う火の粉は熱く、タープやテントの生地に穴を空けかねない。

けれど、炭を燃やしている際にはこの煙と火の粉が殆どでないのである。

思い出してみて欲しい、焼肉屋で卓上に出される七輪からは、煙(肉から落ちた脂が燃え上がる煙は除外)や火の粉は出ていなかった筈だ。

これこそが炭の存在理由で、その訳は昔の日本の生活スタイルに関係している。

昔の日本家屋といえば、木造で屋根は藁葺き、そして家の中心に囲炉裏があった。そしてこの囲炉裏では炭が燃やされ、その熱で暖を取ったり鍋で煮炊きをしたりと、日々の生活に必須な熱源だった。

ではもし、この囲炉裏で炭ではなく薪を燃やしたらどうなるか?

もうお分かりのように、家の中は煙が充満して、とても生活など不可能になる。また火の粉は屋根まで達して乾燥した藁に引火し、あっという間に木で作られた家を火事にしてしまうだろう。

ということで、旧来の日本家屋で使用するには、炭は非常に適した燃料だったというのがその理由になる。


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炭のメリットとは?

では、現代のアウトドアで炭の持つ利点は何かというと、煙や火の粉が出ないことはあまりメリットにならない。家の中のように密閉され、燃え移りやすい素材の傍で使うことはほぼないからだ。

それよりも、上記で書いた煙と火の粉が出ないという以外の炭のメリットが、キャンプやBBQで炭を使う際に活きてくる。

はっきり言うと、野外においては、炭は調理をするための燃料だ。

まず炎が上がりにくいこと。これは特にBBQで肉や魚を焼く際にとても重要な要素で、炎に食材を当てると表面だけが焦げ、中は半生という状態になる。

しかし、炭は燃えると真っ赤な熾(おき)となり、そこから放出される遠赤外線が素材の中心まで加熱してくれて、ふっくらとジューシーに焼き上がる。(詳しくはこちらのコラムも参照⇒BBQ(バーベキュー)での炭火の準備の方法

また、異臭を出さないという点も、せっかくの材料に変な匂いが付くのを防ぐのに有効なのである。

そして、長時間安定した火力を提供してくれることは、カレーやシチューなど時間をかけて煮込むような調理法の際に重宝する。これが薪を燃やして同じ熱をキープしようとすれば、上手な焚き火の技術が必要となってくるからだ。

薪は炭に無い強みがある

と、ここまでの話だと、だったら焚き火もBBQでも薪じゃなく炭の方が良いのでは?となりそうだが、炭にも弱点があり、今度は薪の出番になる。

先ほどからの話の通り、炭は炎が上がりにくく、逆に薪を燃やせば炎が上がる。この炎が発する灯りが薪を燃やすメリットで、キャンプで照明として火を扱うには炎が必要になるからだ。

また実際の話として、炭は薪よりも値段が高いことも大きな理由だ。特に寒いキャンプの夜などに、暖を取り続けようとして炭をバンバン使ったら、薪の何倍もの金額がかかってしまう。

加えて、薪は太めのサイズのものをしっかり燃やすことで、炭が燃えたのと同等の状態(これを熾火という)にすることもできる。そうすれば薪を調理に使うことも可能だ(但しこれには少し焚き火の技術が必要)

で、話をまとめると、、

・炭は料理に使うにはベストだが、それ以外の灯りや暖を取るのには不向き
・キャンプで焚き火をして、さらに焚き火料理をするのであれば、薪+炭の準備が高効良い

ということになる。

火を燃やす目的別で薪と炭を使い分けること、そしてその為にそれぞれの特徴を覚えておく。これが野外で上手に火と付き合う方法だ。

炭火で旨いメシを作り、暖かくて柔らかな炎の傍でゆっくりとくつろぐ。そうしたスマートな過ごし方が出来るアウトドアマンになってもらえたら嬉しい。

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生き抜く技としての焚き火-野外料理に向いた焚き火

 


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