毎年ながら花見のシーズンというのは、寒い。
昼間の温かいうちはまだ良いが、夕方から夜の花見では、冷たいビールよりも温かいお湯割りが欲しくなる。
しかし、会社帰りの花見ではガスコンロを持っている人もいないだろうし、都会の公園では焚き火をする訳にもいかない。
道具が無くても現場で簡単に作れて、周囲の迷惑になったり、怒られたりすることもない程度の火ダネ、、、
となると、現実的に出てくるのが、固形燃料かアルコールを使ったストーブだ。
これらを使った燃焼器具はキャンプ好きならご存じかと思う。
ソロキャンプやブッシュクラフト、UL(ウルトラライト)スタイル方面がお好みの方にはお馴染のアイテムだろう。
どちらの燃料も100均やドラッグストアで簡単に入手でき、安い。
そういう点ではアウトドアになじみの無い方にも手軽だろう。
どちらを使うかはその時の状況によるとして、今回はアルコールが手に入ったという想定で話を進めたい。
というのも、固形燃料の場合、鍋を乗せる五徳代わりの道具を準備する必要がある。
しかし、アルコールストーブは構造上、それ自体に鍋を乗せられるので、余計な道具や工作が必要ない。
また、アルコールしか入手できなかった場合はストーブの作り方を知らなければ、使い物にならないからだ。
(固形燃料の場合、五徳さえあれば、究極、地面に置いて燃やしても何とかなる)
アルコールストーブを良く知らない人のために、どんなものか簡単に解説すると、、
・燃料用または薬用アルコールを燃料とする簡易ストーブ(ストーブまたはコンロの意味)
・着火すると金属の本体が熱くなり、そこを伝わった熱で揮発したアルコールが、ジェット孔から噴き出して本格燃焼が始まる。
・メーカー製のものもあるが、空き缶で簡単に自作できる。
というようなものだ。
このアルコールストーブ、マニアな方が沢山いて、ググってみるとものすごい数の自作ストーブが出てくる。
デザインや燃焼時間、熱効率、燃え方の美しさなどに拘って、メーカー製を凌ぐ出来栄えのモノも数え切れない。。。
そんな中で、私個人としてはベストと思っているのが、今回紹介する”グルーブストーブ”だ。
元々、自作アルコールストーブは、空き缶を使って、ナイフかカッターがあれば作れてしまう。。
製作時間も、1,2回作ってやり方を理解してさえいれば、10分もかからずに作れるのが特徴だ。
しかし、その中でもこのグルーブストーブを私が一番と推すのは、以下のような点だ。
・工作が簡単で、材料も入試し易く、道具もほとんど必要なし
・点火した直後に本燃焼が始まるので、他のタイプに比べて燃費が良い
・ゴトク無しでも使用可能。
・耐風性能に優れ、野外での使用に適している。
そこにある材料と道具で、簡単スピーディーに作れて、必要十分な機能を持つという点。
これは、週末冒険会の理念である、スマートキャンプの考えにピタリと当てはまるからである。
原理としては他のアルコールストーブと同様。
ジェット孔の代わりに、内側の円筒部品に刻まれた溝(グルーブ)を伝って、気化したアルコールが噴き出す仕組みだ。
作り方はグーグル先生で、グルーブストーブと検索すれば沢山ヒットする。
が、今回はそれらよりも敢えて簡易的、かつより簡単なやり方を紹介しようと思う。
グルーブストーブに限らず、ネット上に転がっている製作方法は、綺麗で完成度高く作れるやり方が殆ど。
必要な道具も、ハサミや定規、マジック、あるいはドリルなど、幾つも必要だ。
それらは特別ではないものの、かといって野外やお花見の場では揃わないものも多い。
基本コンセプトとして、”現場で、そこにあるものを利用して、簡便かつ必要十分なもの”
というのが実用的だと思うので、あくまで花見の現場で即席に作るということを第1にやってみたい。
■作り方■
<用意するもの>
・空き缶(缶ビールなどのアルミ缶でOK) 1個
・ナイフかカッター。ハサミがあれば尚良し。
尚、今回の製作ではスイスアーミーナイフのハサミつきモデルを使用した。
<作成手順>
1、空き缶を2つのパーツに切りだす。
1個目は底部付きの本体外側部、もう一つは内側に入る円筒状の部品だ。
本体外側部は底からの高さが4~5cm程度、内側の円筒もほぼ同じ寸法でOK。
上の写真では、ナイフを固定して左手の空き缶を回すようにして切っている。
こうすると高さのムラが少なく切断できる。
内側円筒分の部品を、高さがある程度均一になるように、ハサミでトリミングしている。
ここに鍋が乗るので、あまりでこぼこしていると安定性に欠けることになる。
ハサミが無ければ、石やアスファルトに当てて、やすりがけする要領でOK。
2、円筒分の加工
内側に入れる円筒に溝を刻むため、部品を軽く折り曲げて溝の位置を付けていく。
この時、あまりきっちり折り目を付けると、切れてしまうので注意。
写真では16本の折り目を作っているが、もっと少なくても構わない。
次に、折り目に3mm程度、切れ目を入れていく。
この切れ目は、次のステップの折り加工の際、溝の位置を明確にする目的と共に、残り少なくなった燃料を効率よく吸い上げる効果も持つ。
ナイフの刃などを利用して、折り目をしっかり付けていく。
完成した内筒部品。先ほど入れた切れ目の部分を少し内側に折り曲げる。
筒の裾がすぼんだような形状になっているのが判るだろうか。
内筒部品を外側本体部に挿入し、内筒がどのくらい突き出すかを確認する。
この本体外側と内側の高さのギャップが大きいと炎が大きくなり、小さいと炎も小さくなる。
今回はギャップが小さ過ぎたので、外側本体に切れ目を入れてめくり、ギャップ高を稼いだ。
また、このめくり部分を調整することで、簡易的に火力調整が出来るようにした。
着火した直後の状態。鍋を乗せていないので、周縁部の溝からだけでなく、中心部からも盛大に火が上がっている。
シェラカップを乗せて、水が沸騰するまでの時間を計測。
360ccの常温の水を、約5分で沸騰させることが出来た。
野外で2人分のお茶の為に湯を沸かす時間としては十分、合格点だろう。
<おまけ>
実はこのストーブ、ウイスキーなどアルコール度数の高い酒でも使える。
ただし、余熱に時間がかかることや、五徳が必要なこと(アルコール度数が低いためか、鍋を直置きすると火が消える)
そして何より、貴重な酒を消費するという欠点がある。
燃料のアルコールを使い切ってしまった際の非常手段というところか。
花見に限らず野外でも十分、実用的なこのアルコールストーブ。
簡単な調理を行う程度の目的ならば、ガスやガソリンの代わりとして立派に役に立つ。
あなたの選択肢の一つとして、覚えておいて損は無い筈だ。
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